真浄寺は、井筒屋から北に700メートルの所にある日蓮宗のお寺である。境内でひときわ目をひくのが、笠間城にあった八幡台櫓(はちまんだいやぐら)。明治13年に檀家の方の尽力でこの地に移築された。櫓とは、戦時には本丸を守る戦いの最前線となる。
この八幡台櫓は、屋根が二重構造(二重櫓)で、屋根瓦の先端には鯱が乗っている非常に立派なもの。黒の瓦と白い漆喰の対比も美しい。かつて弓や鉄砲を保管した内部は、今は七面堂とよばれ、三尊神(七面大明神、三十番神、鬼子母神)を祀る仏堂となっている。県の指定文化財で、県、市、真浄寺の三者が手を組んで、この遺跡を次代に残すために力を注いでいる。
七面堂にある賽銭箱は、大正14年に、笠間の芸妓さん達が寄進したもので、裏には90人近くの源氏名が記されている。その頃の賑やかな城下町では、夕刻には髪を島田に結い、三味線を抱えてお座敷に向かう芸妓さんの姿をあちらこちらで見かけたことだろう。
「七面さんは女性を守る神様で、芸妓さん達が日参されたようです。お座敷に上がる前にお参りをされ、それを見守る当時の住職はどんな気持ちだったのでしょう。芸妓さんたちの信心と、寺を結ん
だ『素敵な賽銭箱』だと思っています」
と、微笑まれるご住職のお話が心に残った。
今なお優しい気持ちが偲ばれる『素敵な賽銭箱』を、ぜひ訪れてみて下さい。
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