姥(うば)捨ての伝説は全国にありますが、岩間に伝わる話を。
江戸時代、大飢饉があった年にお殿様が
「60歳以上の老人は山に捨てるように」というお触れを出した。
孝行息子の茂吉も、大切な母親を捨てなければならなかった。
家中の食糧を持たせ、台付きの背負いはしごに母親を乗せ、
泣く泣く山に向かった。
山中の飲み水がある所を見つけ、むしろを敷いて、母親を下ろした。
「帰り道がわからなくならないように、曲がり角に木の枝を折っておいた。
それを目印に帰るといい」と母親は言った。
茂吉は泣きながら家に帰った。
数日後、母親が忘れられない茂吉は、母親を探しに山に入った。
名前をいくら呼んでも、母親の姿はなかった。
山猿が牙をむき、茂吉をおどかすので、それ以上探すことができなかった。
そこで持ってきた木の実と団子を置き、涙をこらえて山をおりた。
母親は岩陰に隠れて返事をしなかったのだ。
息子への未練を断ち切り、木の実と団子を猿にわけ、
猿に守られながら山の中で暮らした。
そこでこの地を「姥猿(おばすところ)」と呼ぶようになった。
9月は敬老の日がある。こんな伝説があったことを心に刻んでおきたい。
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